世界遺産アンコールワット修復工事中に思う...

世界遺産アンコールワット修復工事中に思う...

「歴史の移ろいゆく姿にこそ、憂と趣がある。」

2015年5月。日本ではGWが終わり「次は夏休みか」なんて考えながら、重い腰を上げて人々が動き始める。その時ぼくは、東南アジアを旅していた。シンガポールで丸1日かかってフライトの乗継ぎをし、バンコクで数日過ごした後、ぼくはカンボジアにいた。初めて見たアンコールワットは一部が修復工事中。周辺の遺跡群には、木材の支柱を造ってなんとか現在の保存状態を保とうとしている建造物が多く存在していた・・・

ぼくは心のなかで、なにかボタンの掛け違いのような、歯車が少しだけズレているような、そんな複雑で不思議な気持ちになった。たしかに世界遺産でもあるアンコールワットは素晴らしかった。なにか神聖なものを感じ、圧倒的な魅力でぼくの心はすぐに虜にされてしまった。壁画や彫刻は申し分なく美しい、朝夕で石像に映える色は変化し、より一層の風情を感じずにはいられない。ただそれでも、滞在期間中にその不思議な気持ちが消えることはなかった。世界遺産に修復工事は本当に必要なのか?それこそがぼくが感じた1つの疑問だった。

歴史は移ろいゆくものだ。その時代の流れにこそ、喜怒哀楽を感じ、憂や趣、風情を感じられるものだとぼくは考えている。あんなにも威厳があり、大きく、こわかった父親の背中が、いつの間にか届きそうな、すぐ近くの存在になっていることに気づき、それに気づいた時にはもう小さくて弱く、そして愛おしくなっているように。幼い頃は田んぼや空き地だった家の裏路に、いつの間にか家が立ち並び、それすらも取り壊されてガレージに変わってしまっているかのように。

こんなこともあったりする。「お母さんが小さかった頃は、ここに美味しいお寿司屋さんがあったんだけど、いつの間にかなくなっちゃってたのよね」「この山道、おれが10年前に来た時には整備されていなくて苦労したんだよ」。もちろん以前の姿を知るわけではない。今、いま、この目で見たものがすべてである。いつまでも美しいものをそのままに、それはそれで素晴らしいことだと思う。世界的に重要な文化遺産をいつまでも保護しようということもわかる。でもそれでも、ぼくはそのまま、月日が流れていくままにしておいてほしいと思ってしまった。

もう現在の手で修復されたその場所を知ってしまったら、その一部には風情を感じることはできないかもしない。「10年前までは綺麗な保存状態を保っていたが、だんだんと崩壊が激しくなってきて、今では右側半分だけの状態になっている」「風化があまりにも激しくて、写真で紹介されているような状態ではなくなった」それでいい。それこそが時代の流れであり、歴史なのである。そのタイミングに生まれ、そのタイミングに訪れた人だけが感じられるもの、それこそが心の財産になる。ぼくは王・長嶋時代を知らない。でもイチローがいる。ぼくはマジック・ジョンソンのプレイはわからないけれど、マイケル・ジョーダンはわかる。でも今後出てくる彼ら以上のスーパースターは知らない。でもそれでいい。いま目の前にあるものに、喜怒哀楽を感じ、心を動かされたい。京都という街並み、梅田駅、大阪城・・・その時代時代に変化していくもの。世界遺産という重要文化財であっても、それでいいんじゃないのかなって思ってしまったんだ。

「ぼくが訪れた時のアンコールワットは正門が少し崩れてきていたよ。いまはどう?」「アユタヤ遺跡はもう跡形もなくなってしまったんだなー、まぁでもいつかはそうなるもんだよね」なんていう会話が面白いんじゃないかな。もしくは、修復工事をするのであれば、「5月1日〜7月31日 一部修復工事により立入禁止」であってほしい。もちろん観光ビジネスなので、不可能なことはわかっている。きっと旅行会社へのクレームが殺到するだろう、小さな旅行会社は倒産の危機を迎えてしまうかもしれない。それでもどこを修復したのか、どれくらい崩壊していたのかが不透明なら、それは歴史を時代関係なく、そのまま感じることができる手助けになるかもしれない。

この考えは、ぼくが実際にその場を見て感じたことなだけ。決して今回の旅で訪れたアンコールワットに後悔はない。満足感や充実感以外になにも見つからない。それだけ素晴らしい場所であることに疑いの余地はない。ただ1つだけ、黒幕がかかって「工事中」という看板を掲げられているアンコールワットよりも、少しくらい崩れていても、自然なままの圧倒的な存在感を誇るアンコールワットの全貌を拝みたかった。きっとそのほうが、より心を動かされただろうし、感じるものが大きかったんじゃないかと思う。写真で見た美しすぎるアンコールワットから、少し時代が経って衰えてきているアンコールワットへ。その変貌を見られることも旅の楽しみなんじゃないかな。そんなことを考えながら、朝食のコーヒーを少しこぼしてしまっている。そして、書き終わった後に「いや、でもやっぱり修復してでも保存していく価値がある遺産やな」と原点回帰する自分もまた、いる。

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